明日に向かって捨てろ!!
〜ボーズの脱アーカイブ宣言〜

第54回 『誰かのサングラス。』



── この、半端フィギュアの後ろにある、
サングラスはなんなの?
ボーズ よくわかんないんだよ。
── よくわかんないってのが、
よくわかんないよ。
ボーズ ぼくのじゃないんだよ。
── 誰の?
ボーズ わかんない。
── 子どもじゃないんだから、
わかんないわかんない言わないでよ。
ボーズ あのね、ある日、ぼくのクルマの
後ろの座席のところにポッと落ちてたのよ。
── 誰かが落としたんでしょ。
ボーズ そうなんだけど、
いつ、誰が落としたかがわかんないんだよ。
ほら、後ろの座席なんて、
しょっちゅうチェックしないじゃん。
だけどまぁ、まったく関係ない人の
サングラスが落ちてるわけないから、
おそらく、乗せた誰かのサングラスなのよ。
── え? じゃあ、知ってる人だけど、
誰かはわかんない。
ボーズ そうそう。自分で乗っけた誰かなんだけど。
── ヤバい、おもしろくなってきた(笑)。
ボーズ もどかしいんだよ。
だって、絶対、知ってる誰かなんだから。
ただ、知り合いに片っ端から
「サングラス落としてない?」って
訊くわけにもいかないでしょ。
── けど、そんなに何人も‥‥
まぁ、乗せたりも、するか。
ボーズ けっこう乗ったりするでしょ。
「駅まで乗ってく?」なんつって。
友だちの友だちくらいなら、ふつうに乗るし。
で、先週誰が乗ったかとかなら、わかるけど、
いつから落ちてたんだかわかんないからさ。
── ははははは。おもしろい。
こういう話、好みだわ。
ボーズ いや、笑うけどね、
どうしても誰だかわかんないんだよ。
でも、絶対、ぼくの知り合いなんだよ。
── あはははははは。ひー、やめてくれ(笑)。
ボーズ アニとかシンコに訊いたんだけど、
わかんないんだよ。そりゃわかんないよなぁ。
「ここ数ヵ月くらいで、
 サングラスしてた友だち、いたっけ?」
みたいなことだから。
── すごいね。ちょっとしたミステリーだね。
ボーズ 困るよ。
── まぁ、要するに、忘れ物っていうことだね。
ボーズ で、忘れ物って、捨てられないでしょ。
── ああ、捨てられないねぇ(笑)。
そういえば、オレにも経験ある。
ボーズ あ、そう?
── 冬の寒い日にうちで鍋をやったらね、
年に1度、会うか会わないかっていう、
クリハラ君っていう友だちが、
スノボのグローブを忘れてったのよ。
これがもう、始末に悪くて、
けっこうかさばるんだけど、
捨てるに捨てられないし‥‥。
ボーズ いや、でも、それは誰だかわかってるじゃん。
── わかってるけど、
クリハラ君にはほとんど会わないんだよ。
ボーズ 送りつけりゃいいじゃん。
── クリハラ君に? 
年に1度会うかどうかの人に、荷物送るの?
住所訊いて?
ボーズ うん。
── まぁ、そうなのかなぁ。
でも、実際は、「今度会うときにでも」って、
延々保管してた。
だって、年に1度くらいしか会わないからさ。
ボーズ まだ、誰だかわかってるだけいいよ。
── わかんないからこそ、逆に捨てられたりしない?
ボーズ ところが、このサングラス、半端にいいものでさ。
── あ、そりゃ困るね。
ボーズ 困るんだよー。
── で、どうしたの?
ボーズ まだ持ってるよ。
── 引っ越し先まで?
ボーズ そう。なにやってんだか。
── ええと、じゃあ、これを読んで、
「それ、オレのサングラスだ!」と思った人は、
ボーズさんまで連絡してください。
ボーズ ほんと、お願いします。困ってます。
ぼくが乗っけた誰かです。

(つづきます)

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2008-11-21-FRI
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