ボーズ |
ペットボトルの話を続けるとさ、
これをものすごく完全に
リサイクルさせる方法を発明する
天才が現れたとしたら、
大歓迎されるわけだよね、きっと。 |
── |
そうっすね。猫避けペットボトルっていう
あやしいリサイクルが、
これほど利用されているわけだから。 |
ボーズ |
だとするとさ、もう、なに、
ペットボトルを120パーセント
リサイクルできるとかになったら、
大騒ぎだね。 |
── |
120パーセント? |
ボーズ |
ペットボトルをリサイクルすると、
ボンって、もう1コ
ペットボトルができる、みたいなの。 |
── |
ははははははは。 |
ボーズ |
そのリサイクルとか発明したら、
ノーベル賞ものでしょ。 |
── |
それ、ゴミが増え続ける
みたいなことにならない(笑)? |
ボーズ |
あ、そうか。『ドラえもん』みたいな話に。 |
── |
あ、なんかあったね、そういうの。 |
ボーズ |
あったあった。なんだっけ?
どんどん増えて‥‥。 |
── |
「バイバイン」だ! |
ボーズ |
「バイバイン」だ! くりまんじゅう! |
── |
あの話、恐かったなあ。 |
ボーズ |
あれ、超恐いよね。
※解説:「バイバイン」とは?
『ドラえもん』に登場する道具のひとつ。
ものにかけると5分ごとにその数が倍になるという薬。
のび太が、くりまんじゅうを食べているのだが、
「食べるとなくなってしまう」といって悩む。
そこでドラえもんはバイバインを差し出すが、
「必ず食べきること」と念を押す。
しかし、のび太は、食べては1コ残してそれを増やし、
無限に増え続けるくりまんじゅうをたのしむ。
ところがさすがにのび太もお腹一杯。
どうしようか悩んでいるうちに、
くりまんじゅうはどんどん増えていく。
なんせ、5分ごとに、1コが2コ、2コが4コ、
8コ、16コ、32コ、64コ、128コ、256コと、
恐ろしい勢いで増えていく計算になるのだ。
どうしても食べきれなかったのび太は、
ゴミ箱にまんじゅうを捨ててしまう。
それを聞いたドラえもんが大あわてで裏庭に行くと、
そこは、くりまんじゅうでびっしり。
最終的に、ドラえもんは、無限に増え続ける
くりまんじゅうをロケットで宇宙へ送ってしまう。
なんとも壮大なオチであり、いまこの瞬間にも
宇宙がくりまんじゅうで満ちているのだと思うと、
幼き読者は恐怖したのである‥‥。 |
|
|
── |
宇宙に送っちゃうんだよね。 |
ボーズ |
宇宙に送っても問題解決しないんだよな。
何億個とかになっちゃうでしょ。 |
── |
だいたい宇宙に行くまでに
もう倍になっちゃうだろうっていう
恐怖があったよね。 |
ボーズ |
そうそう。
ホッとしてる場合じゃないっていうね。 |
── |
バッドエンドだよなあ、あの話。 |
ボーズ |
はははは。ちょっと待って、
いま、文庫版の『ドラえもん』持ってくるわ。 |
── |
あ、あるの? |
ボーズ |
うん、ちょっと待ってて。
(ごそごそごそ‥‥)
はい、これ。 |
── |
たしか、バイバインもどっかにあったよ。
(しばし本をめくり‥‥) あ、あった! バイバイン(笑)。 |
ボーズ |
それ何編? |
── |
「恐怖編」だ。ドンピシャだ(笑)。 |
ボーズ |
「恐怖編」だよねー(笑)。
やっぱり。超恐怖だよね。 |
── |
ふーん(ふたりして読みながら)
あ、でも薬自体は、
ドラえもんがかけちゃうんだね。 |
ボーズ |
そうだね。そうそう、こういう話。
1コどうぞ、食べられないよっていって、
1コだけあまり続けちゃうんだよね。 |
── |
で、ドラえもんはいちおう、
のび太に注意をして‥‥。 |
ボーズ |
「早く食べちゃえよ」ってね。
またさ、くりまんじゅうを
腹に入れちゃえば増えないっていうのは
変な話なんだけどね。 |
── |
そうそうそうそう!
それ、おかしな話だよね。
で、それも子ども心に感じてるんだよね、
オレらは読みながら。 |
ボーズ |
そうそう。「おかしいじゃん!」みたいな。
「腹の中で倍だよ」っていう。 |
── |
で、最後がこのオチ(笑)。 |
ボーズ |
すっげー、これ(笑)。
宇宙に送っちゃうんだもんなあ。 |
── |
しかもオチ、2コマだ(笑)。
すげーたくさんある
くりまんじゅうを見て
「うわーっ!」って驚いて‥‥。 |
ボーズ |
「宇宙の彼方に送るしかしょうがない」
って言って、ロケット飛ばして終わり。 |
── |
終わってないよなあ。 |
ボーズ |
終わってないよねえ(笑)。
いやだよなあ、
宇宙いっぱいのくりまんじゅうは。 |
── |
しかもさ、くりまんじゅうって、
微妙にイメージができなくない? |
ボーズ |
できないできない(笑)。 |
── |
子どものころ、そう思ったんだよな。 |
ボーズ |
くりまんじゅうってなんだよ、みたいな。 |
── |
「くりまんじゅうってなんだろうな?
まあ、くりのまんじゅうでいいのかな」
って思いながらも、とにかく恐いんだよ。 |
ボーズ |
ラスト1コマ前のこの絵ってさ、
ほんっっっとに、
「取り返しのつかない感」
っていうのがあるよね。 |
── |
あるあるある(笑)。 |
ボーズ |
これがさ、5分後にさ、倍になるんだよ?!
ボワッて。ああ、もう恐い恐い(笑)。
やべえやべえ。 |
── |
こういうの読むと、
ほんとにのび太はバカだなって思うんだよね。 |
ボーズ |
思うんだよね。
のび太、ほんとに食えよ、バカっていう。
おまえ、ほんとバカっていう。 |
── |
オレが迷惑するじゃんか、
みたいな勢いなんだよね、なんか。 |
ボーズ |
そうそうそう(笑)。 |
── |
こんな話、延々できるなあ(笑)。 |
ボーズ |
でも、通ずるところがあるよ。
くりまんじゅうもゴミも捨てる話だからね。 |
── |
そういや、ドラえもんの中でも、
収納とか、リサイクルみたいな話は‥‥。 |
ボーズ |
けっこうあるよね、たしかに。 |
── |
あるある。
それ、広げて話してみてもいいかも。
「ドラえもんに見る収納術」、とか。 |
ボーズ |
ああ、いいかも。
あ、でも、ドラえもんはさ、
収納はほら、四次元ポケットあるからさ。 |
── |
あははははは! くだらない(笑)! |
ボーズ |
そこでもう一発で終わっちゃうんだよ。 |
── |
くだらないわー(笑) |
ボーズ |
だから、四次元ポケットだっつーの!
オレが欲しいのは! |
── |
あはははははは。 |
ボーズ |
四次元ポケットにレコードぜんぶ入ったら、
もうつぎつぎ、バンバンレコード出して、
DJとか楽でしょうがないよ。 |
── |
こんなくだらなくていいんですか。 |
ボーズ |
ライブとかもそれでできちゃうよ。
いやあ、四次元ポケット、いいなあ。 |
── |
あ、バイバインのくりまんじゅうだって、
四次元ポケット入れちゃえよって話だ(笑)。 |
ボーズ |
だって四次元だもんね! |
── |
こんなくだらなくていいんですか。 |
ボーズ |
ドラえもんのなかで出てきた収納でいうとさ、
たしか、ここにこうやると、
ものが置けちゃうやつ、あったよね、
「重力ペンキ」みたいなやつ。 |
── |
「重力ペンキ」、あったあった。
※解説:重力ペンキとは?
ペンキを塗ると、重力が変化し、
そこが下になってしまうという道具。
つまり、壁に塗れば、そこにふつうに
ものが置けちゃうのだ。 |
|
|
ボーズ |
あれ、超ぉぉぉぉぉ便利だと思う。 |
── |
そりゃ便利だけどさ(笑)。 |
ボーズ |
いいわ、あれ。だって、
ポンポン置いていけるんでしょ?
この部屋、ずいぶん広くなるよ。 |
── |
四次元ポケットより欲しいかも? |
ボーズ |
あ、四次元ポケットより便利だよ。
すぐ使えるし。 |
── |
うははははははは、なんだ、それ(笑)。 |
ボーズ |
四次元ポケットはさ、整理とか、
取り出すときとか、ややこしそうじゃん。 |
── |
こんなくだらなくていいんですか。 |
ボーズ |
いいんじゃない(笑)? |
── |
あと、「キャンピングカプセル」
ってあったよね。
※解説:キャンピングカプセルとは?
長編映画第1作「のび太の恐竜」に登場し、
お馴染みとなったアイテム。
ちいさな丸いカプセルを地面に刺すと、
ドーンと大きくなって、なかで寝泊まりできる。 |
|
|
ボーズ |
あれもいいよねえ。
ポスってやるとドーンってなるんだよね。
ああいう、「手軽にほかの部屋をつくる」
っていう道具は多いよね。 |
── |
地下に埋めてボンッてやるとドーンってなって
地下スタジオができちゃうやつあったよ。
※解説:ポップ地下室
小さな箱を地面に埋めて、ボンッとやると、
ドーンってなって、地下スタジオができちゃう。 |
|
|
ボーズ |
ああ、あれそうだよね。
あれって都会人の考えかただよね。
「うちにこんなスペースがあったらいいのに」
みたいな感じ。 |
── |
うまいことやるよねー。
しかもあれ、使い道が
映画の撮影スタジオなんだよね。 |
ボーズ |
そうそう。『スターウォーズ』的なやつね。 |
── |
撮ったものがミニチュアになって
でてくるカメラ(ミニチュアカメラ)で
セットつくるんだよね。あれ、好きだなあ。
あ、球根で地下室つくるやつ、なかった? |
ボーズ |
球根? 木の根っこじゃなくて? |
── |
あ、そうだそうだ、根っこだ。
※解説:アパートの木
植えると、地下で根っこがふくらんで、
それぞれが部屋となる。
しかし、欠点があって‥‥。 |
|
|
ボーズ |
木の根が部屋になるんだよね。
地下にみんなの個室をつくろうみたいな。 |
── |
で、机とか持ち込んで、
ぜんぶ埋まっちゃったっていう。 |
ボーズ |
そうそう。
一日で木は枯れちゃうんだよ、っていうオチ。 |
── |
‥‥ていうかさ、あの人たちさ、
収納に便利な道具、たくさん使うけど、
「ものが置けないよ」っていう
モチベーションで使ったりはしないね。 |
ボーズ |
あ、違うね。そうなんだよな。
動物が飼えないから、ちっちゃくして、
部屋で飼うとか、そういう動機なんだよね。 |
── |
だから、「重力ペンキ」なんて、
ぜんぜんありがたがられてないもんね。 |
ボーズ |
あんなに便利なのに!
「重力ペンキ」、超ほしい。 |
── |
「超ほしい」って言われても(笑)。 |
ボーズ |
助けて、ドラえもん。 |
── |
いいオトナがふたりで
こんなこと言ってていいんですか。 |
ボーズ |
ははははは。 |
── |
これって、真剣に
「ドラえもんがいたらなあ」
っていう話をしてるわけでしょ(笑)? |
ボーズ |
はははは。そういう話になっちゃうよね。
まあ、現実に目を移すと、
てんとう虫コミックスで読んでた
『ドラえもん』が、こうして
文庫版になってちっちゃくなってるのは、
省スペースだよね。
『ドラえもん』はここまで縮まったみたいな。 |
── |
日本の『ドラえもん』は
ここまでコンパクトになったってこと? |
ボーズ |
そうそうそう(笑)。
がんばった結果だよ。
「重力ペンキ」も
「四次元ポケット」もないから
マンガのほうをがんばって小さくした。 |
── |
っていうかさ、それこそが、
ドラえもんはいないっていう
証明でもあるよね(笑)。 |
ボーズ |
うわっ、寂しい(笑)! |
── |
っていうか、この文庫版、
「爆笑編」とか「感動編」とか、
テーマ別になってるのがおもしろいね。 |
ボーズ |
うまいんだよね、編集で見せるのがね。
これもある種の再利用だもんね。
ほんと、リミックスというか、
リマスターというか。 |
── |
ああ、そうだね。 |
ボーズ |
しかもさあ、こういうのってもう、
オレら世代がやってるからね。 |
── |
昔、真剣に読んでた世代が。 |
ボーズ |
そうそうそう。そりゃツボつくわけだよ。 |
── |
うんうん。だって、これ、
いまから2時間くらい
平気で読みふける自信があるもん(笑)。 |
ボーズ |
あ、これとか、おもしろいよね。
四次元ポケットが壊れちゃう話。 |
── |
がらくたばっかり出てきちゃうやつだ。 |
ボーズ |
「さすと雨が降る傘」とかね。 |
── |
「ひとりでケンカができる機械」だって。
ん? これってゴミじゃん。 |
ボーズ |
ああ、ゴミだね。どうするんだろ‥‥。
「危ないからどこかへ埋めよう」だって。 |
── |
埋めんのかよ! |
ボーズ |
あ、「百苦タイマー」だ。 |
── |
百の苦しみが襲ってくる機械ね。 |
ボーズ |
そうそうそう。
「修行につかう道具」だって。
イヤだっつーの(笑)。 |
── |
「ロケットで宇宙へ送り出してもダメか」
とか言ってる(笑)。 |
ボーズ |
またそんなこと言ってるのか(笑)! |
── |
ってことは、ドラえもんの
不法投棄の場所って宇宙なんだな。 |
ボーズ |
はははははははは。 |
── |
ああ、「感動編」はぜんぶいいなあ。
ぱらぱら眺めただけでもジーンとする。 |
ボーズ |
ぼくはもう、おばあちゃんが
出てくるタイプに弱いなあ。 |
── |
あああ、いいよねえ。
ぼくが弱いのは、のび太が何かを
飼いはじめちゃう、あのタイプね。 |
ボーズ |
恐竜とかね。 |
── |
ピー助ももちろん好きなんだけど、
すげえ好きだったのは
フー子なんだよね。台風のフー子。 |
ボーズ |
タマゴからかえすやつだ。
あれ、よかったねー。 |
── |
ラストののび太の
「風が舞ってるとフー子のことを思い出す」
っていうのが、ほんとに記憶に残ってて、
いまだに、葉っぱがくるくるするのを見ると、
あの最後のコマを思い出すんだよ。 |
ボーズ |
ああ、そういうの、あるわ。
あと、この話も泣けるよねえ。 |
── |
どれどれ‥‥。 |
ボーズ |
‥‥‥‥。 |
── |
‥‥‥‥。 |
ボーズ |
‥‥あ、ダメだ、泣けてくる。
ムリムリ! これ以上は、ムリ! |
── |
あははははははは。 |
ボーズ |
いいオトナがなにやってんだか‥‥。 |